「生死の境目」インドの衝撃観光地ベナレスを訪れてみる

インドには、世界中の旅人そして作家やアーティストに影響を与えた場所があります。ヒンドゥー教最大の聖地ベナレスです。三島由紀夫の「豊饒の海」に登場する他、多くの作家の作品に出てきては人々に衝撃を与え、旅人が憧れを抱く場所でもあります。ベナレスは、生死の境目と言われています。インド各地から参拝客が訪れますが、24時間ずっと火葬の煙が上がり続けています。火葬場の隣には「死を待つ人の家」があります。生と死が隣り合ったその光景を目にした人々が受ける衝撃は、ベナレス・ショックとまで言われるほどです。

聖なるガンジス川を訪れる人々

ベナレスは、ガンジス川を中心に広がる地域です。ガートという階段状の防波堤で川に降りられるようになっていて、ガートの上には大小1500近い数のヒンドゥー教寺院が立ち並んでいます。ガンジス川はヒンドゥー教徒にとって聖なる川。その1滴があらゆる水を浄化し、ガンジス川で沐浴すれば罪が清められるとされています。そのため、インド中そして世界中からヒンドゥー教徒がベナレスを訪れます。沐浴するためであったり修行するためであったり、ただ死を待つためであったり、その目的は様々です。

「死」という日常の光景

ベナレスは「大いなる火葬場」とも呼ばれています。ヒンドゥー教は墓を作りません。遺体はすべてガンジス川で清められたのちに火葬され、遺灰はガンジス川に流されます。ガートにある2ヶ所の火葬場には、インド各地から遺体が運び込まれてきます。多い日は1日100近くの遺体がインド中から持ち込まれ火葬を行うその横には「死を待つ人の家」があり、そこにいるのは名の通り死を待つだけの人々です。貧乏人や子供などが生きたままガンジス川に沈められ、しばらくすると遺体が浮かび上がってきます。ベナレスを訪れる人々はそういった光景から、死が日常であることを痛感するのです。

観光地としてのベナレス

「生死の境目」のベナレスですが、ヒンドゥー教の参拝目的ではなく単なる観光目的でその地を訪れる人ももちろんいます。ガート沿いにはゲストハウスがあり、一般の民家も並んでいます。生死を強く意識させられたガンジス川周辺とは打って変わって市街の時間はゆったりと流れ、リラックスした雰囲気が広がっています。観光名所としては、19世紀にマハラジャ王によって造られた「ラームナガル要塞」という宮殿と「バーラト・マーター寺院」というマハトマ・ガンディーによって創設された寺院が見所です。

多くの人に影響を与え多数の有名作品に登場する「生死の境目」ベナレスは、日本で暮らしていては気づけない強い生死感を教えてくれる場所です。だからといって恐ろしい場所では決してなく、私たちと同じように普通に生活をしている住人たちがいます。リラックスした雰囲気の市場があります。各地から参拝しに来る人々がいます。もしも旅行の行き先に迷ったり、観光先がマンネリ化していると感じていたら、一度ベナレスを訪れてみるのもいいでしょう。きっと忘れない大きな経験になるはずです。

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